荒川石 (ベゼリ石)
Veszelyite

秋田県大仙市(旧協和町)日三市鉱山(荒川鉱山の支山)産 荒川石(ベゼリ石)

解説
 ベゼリ石は銅・亜鉛鉱床の酸化帯に産する二次鉱物( (Cu,Zn)3(PO)4(OH)3・2H2O )で,単斜(擬八面体)晶系の結晶ですが,国産では明確に結晶がわかるほど大きな自形結晶はほとんどみられません。
↑ ベゼリ石の自形結晶(モンタナ州ブラックパイン産)
 世界的にも,19世紀の終わりにルーマニア(当時ハンガリー領)で発見されて以来、数ミリ以上の大きさの結晶しか知られていませんでしたが、1970年代になってモンタナ州ブラック・パインから数センチ大の美晶が出たことで、一気に有名鉱物の仲間入りを果たしました。(写真上)
 この類の微小で希産な二次鉱物は種の同定がなかなか難しく、新種かどうか学者でも悩むことが多かったようです。日本では明治時代に秋田県日三市鉱山(荒川鉱山の支山)に出たベゼリ石が有名で、一時は荒川石という新鉱物と考えられていました。 戦時中に出版された本邦鉱物図誌4(昭和16年 大地書院)には、荒川石の項があり、次のように記されています。
 荒川石は秋田県仙北郡日三市鉱山より産する青緑色の美しい鉱物である。明治33年に若林彌一郎博士により発見せられて以来、その性質の詳細が決定せず、荒川石なる名前で通用してきたが、最近形態よりこれをベゼリ石と決定された。
 すなわち、最初若林彌一郎氏の珪孔雀石としての記載があり(明治33年)、後福地信世氏はこれを燐銅鉱とせられた(明治34年)。大正2年分析の結果むしろベゼリ石に近いことが見出されたが、大正10年若林氏は「ベゼリ石に似るが、砒素を含まないので異なる」とせられ、新鉱物として記載され、神保小虎氏はこれに「荒川石」なる名前を与えられた。
 一方外国においても、F.P.Mennell は南アのローデシアにこの荒川石と全く同様なものを見出した。すなわちベゼリ石に似ているが砒素を含まないものである。すなわちベゼリ石の原産地はハンガリーのMoravicza で、Schrauf の研究によると10%の砒素を含むとされている。
 ところが、最近詳細な形態的の研究により、荒川石はやはり形態的にベゼリ石なることが判った。相続いてV.Zsivny は原産地のものについて詳細に調べた所、砒素を含むのは何かの間違いで、まったく砒素を含まぬことを知った。ここで荒川石は分析形態共にベゼリ石と決定された。

※昭和27年頃、岐阜県神岡鉱山に出たベゼリ石は、亜鉛を含む変種というので、神岡石(Kamiokalite)の名を与えられましたが、最終的にやはりベゼリ石(の亜種)となりました。